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美術コース2年生 夏期宿泊研修を終えて

出発前に私自身、夏風邪をひいてしまいコンディションも最悪で不安なまま2年生の夏期研修を迎えることとなった。天候は私の体調とは裏腹に、絶好の研修日和になった。

倉敷美観地区の三宅商店での昼食
倉敷美観地区の三宅商店での昼食

昼食の手作りカレー
昼食の手作りカレー

7月23日にバスで8時半に学校を出発し、ほぼ予定通り12時頃に倉敷の美観地区に到着。
約2時間半バスに乗っていただけであるが、12時になると不思議に空腹になる。
早速、美観地区の外れにある「三宅商店」というモダンなカフェで昼食をとることになった。
この「三宅商店」は、元々古い荒物屋さんだったところを昔の雰囲気そのままに洒落たカフェに改築してあるお店である。生徒達は冷房もなく、扇風機が回るだけの店内で汗を拭きながら、昔の生活に思いを馳せつつ手作りのカレーをおいしそうにほおばっていた。しばらくしてから食後には、美術コースの生徒らしく興味深げに店内を観察していた。

食後すぐ、大原美術館に移動し2班に分かれておしゃべりプログラムを実施した。
3年目になるこのプログラムは学芸員さんが絵の解説をするのではなく、単純に作品を見ての疑問や興味を生徒個々に投げかけ、会話のやりとりをする。大変分かり易いうえ、先入観無く作品に入っていけるので、私自身も一緒に観賞させて頂いて、大変興味深く勉強になった。

夕刻にはホテルに到着し、瀬戸内海に架かる雄大な瀬戸大橋を眺めながら夕食をとった後、クロッキーを約1時間実施し、入浴後点呼就寝となり第1日目のメニューを無事終えた。

一泊めの鷲羽ハイランドホテルでのクロッキー
一泊目の鷲羽ハイランドホテルでのクロッキー

2日目は宇野港より直島に渡り、いよいよ地中美術館の見学である。地中美術館は開館して5年目を迎えるが、建設した美術館を再度地中に埋めて、周囲の景観にとけ込む配慮をしている安藤忠雄氏が設計した素晴らしい美術館である。

またこの美術館は、モネ、ジェームス・タレル、ウオルター・デ・マリア、光をテーマにした3人の作家の為に設計された安藤忠雄氏自身の作品でもある。
私も毎年の様にこの場所に来るが、生徒達の反応を見る事が大変楽しみで、しかも全く飽きの来ない美術館である。

シーサイドレストランでコース料理を頂いた後、直島に最初に建設されたホテルと一体型の美術館、ベネッセハウスに徒歩で向かった。この美術館も安藤忠雄氏の設計で、国内外多くの現代美術作家の作品が展示されている。
生徒達は、現代美術作品から発信されるメッセージを学芸員の方が解説する度に、しきりに感心し熱心にメモを取っていた。
その他、島内には体験型現代美術作品の家プロジェクトがある。7箇所ある中で、南寺、角屋、はいしゃ、碁会所、石橋の5箇所を見学した。
島には木陰があるとはいえ、流石に生徒達はかなりバテ気味で、見学終了後は疲れた足を引きずるようにバスに乗り込み、宮浦港からフェリーで、香川県の高松港へ向かった。

2日目のホテルは屋島のてっぺんにあり、夕刻は瀬戸内海に沈む絶景の夕日を眺め、夜にはホテルの窓から宝石のような夜景を眺めながらも、生徒達は疲労のためか早い時刻から眠りについていたようだ。

研修の最終日はいよいよ徳島県鳴門市にある大塚国際美術館にバスで向かった。
これまでの行程はトラブルもなく順調だったが、高速道路で故障車輌が立ち往生しているという情報が入り、地道を迂回しなければならなくなった。そのおかげで、美術館への到着が50分ほど遅くなったので、仕方なく美術館の鑑賞時間を30分引き延ばした。
1000点を超える忠実に再現された陶版の名画の中から今回は、ルネッサンスの作品群を中心に学芸員さんに解説していただいたが、分かり易いうえにとてもユーモアがあり、予定の1時間を超えてもむしろ短く感じてしまうほど楽しく鑑賞できた。
その後、残りの自由鑑賞は1時間程度しかなかったので、生徒達は皆、後ろ髪を引かれる様に、美術館を後にした。
鳴門海峡大橋を渡りながらバスの中でふと考えたが、彼女たちの多くが12月の修学旅行でフランスに行き、ルーブル美術館やオルセー美術館で、レプリカでなく、本物の作品に出合う機会があると思うと、非常に羨ましく思える。

今回の研修は少しアクシデントはあったが、欠席者や、目立った体調不良者もなく無事終了することが出来た。また研修で得た知識や経験等多くの財産は、心の栄養素として彼女たちの作品に、或いは生き方に確実に反映されることを確信できた研修であった。

大塚国際美術館 解説をして下さった安東さんと共に
大塚国際美術館 解説をして下さった安東さんと共に



大原美術館を見学して
2年1組11番 鳥取 花奈

大原美術館入口、ロダンの『カレーの市民』の前で
大原美術館入口、ロダンの『カレーの市民』の前で

待ちに待った夏期宿泊旅行の日が来た。大暑で日光が強く照りつける中、バスに揺られて、岡山県の倉敷美観地区へ行った。美観地区へ足を運んだのは今回が二度目だが、一度目に訪れた時はまだ小学校の頃だったので、印象が全く違って見えた。しかし、美観地区の良さは変わらなかった。

この倉敷の美観地区に訪れたのは他でもない。大原美術館で美術鑑賞をするためであった。私達は二班に別れてプログラムを実施したが、栞にも書いてあった、この美術館ならではの「おしゃべりプログラム」というプログラムは、堅苦しいものではなく、とても楽しいものだ。その内容というのは、学芸員の方が私達に館内に展示されている美術品についての質問と、その返答を繰り返しながら、美術品の真相に迫る、というものである。

初めに説明を受けたのは、大昔に作られた大皿だった。大皿の受け部分には櫛や鏡を手に持ち、お洒落をしているような人魚の絵が描かれており、時代を感じられる色合いをしていた。受け部分の周囲には“Mirmaid of ZENNOR”と書かれていた。これはそのまま、「ゼノアの人魚」という意味だそうだが、文字のバランスがなぜか左右不対称だった。学芸員の古和さんがおっしゃるには、描いている途中でバランスが崩れてしまったので、それを誤魔化すために、右半分の文字を詰めたらしい。そのバランスの崩れを直す為なのか、人魚の足下辺りの波を表した模様の中に点が一つ一つ描かれている。古和さんはそう説明なさっていた。話は変わるが、この工芸品の名称は「ガレナ釉筒描人魚分大皿」という。この名称にある「釉筒描」ということについても説明して下さった。受け部分の周りに網目の模様が描かれていた。その模様というのが、釉薬でちょうどケーキに塗る絞るクリームのように描かれたため、名称がこのようになったのだということである。

二つ目の説明は、一見何を表しているのか、何を表したかったのかよく分からない絵画作品であった。二組の模型のような、ロボットのような、とにかく人型のものがジョルジュ・デ・キリコの地面に立って寄り添い合っている。そんな絵だった。「おしゃべりプログラム」では、そんな不思議な絵の真相も分かってしまったのである。

まず、この二組の人型の模型のようなものは二つとも全く同じという訳ではないということから始まった。その違いというのは、二つの内の一体にはくびれや丸味を帯びていることから、これは女性を表しているだろう、と古和さんはおっしゃる。もう一方はガッチリして肩幅も広く、首が太いため男性を表していることが分かった。

背景の方は、影やパースがバラバラで現実離れしていて、とても不安定な印象がある。そんな不安定な状況の中で寄り添い合う男女、これはきっと運命に逆らうことのできないことから別れることになってしまうところなんだ、という結論を残して下さった。

この絵画のタイトルは「へクトールとアンドロマケーの別れ」。

クリミア戦争で別れることになってしまった男女の悲しみを描いたこの絵は、「シュールレアリスム」の先駆けにもなった作品なのだそうだ。

他にも、この大原美術館には沢山の美術品が展示されていた。その中でいくつか挙げていこうと思う。まず、一番私の琴線に触れたのはシャガールの「恋人」だ。赤、青、緑などの原色がふんだんに使われているのにも関わらず、全然けばけばしさはなくて、寧ろ落ち着いた雰囲気が感じられた。他には、「ブルー一白鯨」。

「カットアウト」、それからモネの「睡蓮」。シニャックの「オーガェルシーの運河」などだ。この倉敷の美観地区で、日本でも有数の美術館である大原美術館でこんなに素晴らしい体験をすることが出来た。暑さなどどうにでもなるぐらい有意義な一日を過ごせたと心から思う。




地中美術館へ行って
2年1組16番 三木 佳菜子

直島 ウォルター・デ・マリアの作品の前で
直島 ウォルター・デ・マリアの作品の前で

直島 シーサイドレストランでのコース料理
直島 シーサイドレストランでのコース料理

二日目の一番最初に行った美術館は地中美術館である。本当に安藤忠雄さんがデザインした地中美術館の建て物は、中に展示してある作品達のことを思いやっている、展示物をいかに美しく魅せることが出来るかということを考えているということがものすごく伝わってくる印象を受けた。
建築物自体が芸術だということに驚いた。 コンクリートが多く使われている壁などを見ると端のエッジがとても美しくて見惚れた。
館内でメモが取れないと聴いて忘れないだろうかと思っていたがどの作品も強烈に個性的であり、今まで鑑賞してきた作品とは全く違っていた。

ウォルター・デ・マリアの作品を見た時は何を表しているのかあまり分からなかったが、学芸員の方の解説を聞くと表したかった事がよく分かり、自分の伝えたい事を自分で表現する事の出来る人は天才だ、と感じた。

ジェームス・タレルの「オープン・スカイ」は、表情が様々に変化する空を座りながら見ているとずっと一日中見ていたくなると思った。

クロード・モネの睡蓮のシリーズの絵は本当に安藤忠雄さんの作り上げた空間と調和していて真っ白な空間にモネの絵画の美しさが引き立ち、夏の暑さがぶっ飛ぶ程に異空間にいるような気分になった。
初めての現代アートがこんなにも楽しいものとは思わなかった。


ベネッセハウスミュージアムへ行って

直島 宮浦港 草間弥生の作品の前で
直島 宮浦港 草間弥生の作品の前で

本日二つ目の美術館、「ベネッセハウスミュージアム」へ行った。ベネッセハウスミュージアムは前に行った地中美術館とは同じ現代アートでも種類が大きく違う物が展示されている美術館であった。
この美術館でも学芸員の方に解説をして頂いて、それを聴きながら約二時間館内を見学した。
展示物はどれもポップでどこかしら楽しげな作品が多くあり、ユーモアに富んでいるという印象を受けた。
けれどもどの作品も深い意味を持っていて何か作品自体が伝えようとしている様に見えた。

色々あった作品の中でも好きだったのは、柳幸典「バンザイ・コーナー」で、鏡をコーナーに置いてウルトラマンを日本人の象徴として表現しているということが凄いと思う。子供がウルトラマンを一体取っていってしまったエピソードも面白かった。

けれども一番心に残ったのは、ブルース・ナウマンの「100生きて死ね」という作品である。たくさんのネオンで作られた人間の生活に関わる英語がランダムで光り、人間の生きていて一番充実している時などを表すという作品である。解説を聞くまではただのチカチカしたネオン管をぼーっと見ているしかしなかったのに、何を表すのかを聞くとただのチカチカした作品に見えなくなった。


家プロジェクトを鑑賞して

直島 家プロジェクト 大竹伸朗作品 『はいしゃ』(旧歯科医宅)
直島 家プロジェクト 
大竹伸朗作品 『はいしゃ』(旧歯科医宅)

本日の最後は「家プロジェクト」の鑑賞であった。直島・本村地区に散らばっている古い家屋を利用してアーティストの方々がそれぞれの空間を作品化しているプロジェクトだった。
各アーティストによって全然作品の見せ方、雰囲気が違っていて、古い外観の民家からは思いもよらないような作品が中に入っていたりして本当に中に入るまで分からないスリルがあった。

「角屋」という建て物には宮島達男さんのデジタル数字を使った作品が二つあり、窓に映るデジタルの数字が自動的に変化する様子は驚きすぎて訳がわからないと思った。民家の中にもう一つの水を張った作品は普通の家では絶対に見ることの出来ない光景だと感じた。

大竹伸朗さんの「はいしゃ」は何が「はいしゃ」なのか良くわからなかったが、たくさんあった中でも一際目立つ作品だった。屋内の自由の女神が圧倒的な存在で心に残った。一番最後に見た南寺は今まで見てきた物と全く違っていてすごく混乱したけれどこんな事を考える人は本当に凄いと思い、芸術って領域が広いんだと感じることができた。




大塚国際美術館を訪れて
2年1組15番 松岡 真里絵

大塚国際美術館再現されたスクロベーニ礼拝堂の中で
大塚国際美術館
再現されたスクロベーニ礼拝堂の中で

宿泊研修の最終日である7月25日には、大塚国際美術館の見学となった。これは、徳島県の鳴門に大塚製薬の社長によって建てられた広大な美術館である。そして何より、1000余点もの作品が全て陶板のレプリカであるということが、一番の特徴だろう。大きさ、色、額縁、表面のひび割れ具合に至ってまで再現されている。触れることも、写真を撮ることも可能な、非常に珍しい美術館なのである。

始めに驚いたことと言えば、入り口を通って直ぐ正面にある長いエスカレーターだ。学芸員の方の言葉によると、所要時間は1分半だそうだ。ここでこの美術館の不思議な所は、エスカレーターで着くと、地下3階になるということだ。奇妙な感覚ではあるが、山を削って建て、また埋め直した為、そのような構造になったらしい。広大な上に複雑な構造なので、迷子になる方も多いらしい。経路を示す矢印に従えば4km全てを歩けるということだったので、 それほど長い距離であれば迷子が出ても仕方が無いことかもしれない。

学芸員の方の説明を聞きつつ、私達は作品を鑑賞していった。時間等の都合もあり、解説をして頂いたのは主には地下3階と地下2階である。中心は古代、中世からルネサンスの作品だ。

ひと目見て圧倒されたのは、ミケランジェロの「システィーナ礼拝堂 天井画」だ。その巨大さにも関わらず、きめ細かに描かれた画面。ミケランジェロは、17mの高さに飾られた時のことを計算して描いたという。その証拠に、短縮法が使われている。ミケランジェロが、この天井を4年間で仕上げたなど、とても信じることが出来ない程の出来映えだった。描かれているのは聖書の物語だ。アダムとイヴの話や、ノアの大洪水などである。順番に目で追っていくと、物語の流れが分かる。全体で見るのも勿論良いが、1つ1つの絵の状況や背景を考えていくのも楽しいと思う。そのように考えると、物語の流れにより、1巻の絵に描かれた場面の内容が想像できてしまう。1つ1つを吟味しながら見ていくだけで、相当の時間を要するに違いない。一日中この絵の中にいられるような気さえしてくる。描かれている物語は同一である筈だ。だが、ミケランジェロはそれを自分なりに捉えた表現で絵画として表した。それをまた、私達は個々でミケランジェロの伝えたかったことを捉える。個人の考えや見方は全く異なるものであり、作品の捉え方も全く異なるものとなるだろう。元は同じ物語であった筈が、捉え方によって、全く感じ方の違う作品になる。そう考えると、想像力とは本当に不思議なものを生み出している。

今日では有り得ることのないものを実現出来るのも、レプリカであるからこそだ。「エル・グレコの祭壇」は、現在完成品で見ることは不可能だ。だが、ここでは完成品の形で復元させている。更にレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は、修復前と修復後という二種類が展示されている。これにより、修復前後の違いが一目瞭然だ。足元にあった汚れや、食卓の上の物が修復されると、どれだけこの作品の画面が汚れていたかが良く分かった。前後を見て違いを見つけることも、間違い探しのようで楽しいのではないかと思う。

時間の都合で全部見ることは出来なかったが、細密に再現された作品の数々により、有名な作品を、写真で見るより遥かに身近に感じられた。世界中の作品が集められているということで、全部見ればきっと充分な満足感が得られると思う。これで本物の作品を見た時には、やはり、本物ならではの迫力を感じるに違いない。きっと、レプリカを見た後には本物の威力は凄いと思えることだろう。とはいえ、世界にある全ての作品を見られる機会は少ない。従って、この大塚国際美術館にある全ての作品を鑑賞して、世界の美術館を巡った気分に浸るのも悪くないだろう。機会があれば、ゆっくりと時間をかけて見て回りたい。

  今回の宿泊研修では、いつもの学外授業よりも、多くの刺激を受けることが出来たと思う。時間がある時に、個人で再度見たいという作品も多くある。新しいアイディアや可能性も得ることが出来た。美術の世界には個性の強い作者が多いが、今回はより多くの、個性の強い作品に触れることとなった。この三日間で学んだことを胸に、自分の中にある力や可能性を広げていきたい。


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